普通の木工用ボンドでは接着が難しい素材にも使用できる「プレフィニッシュボンド」を使って、実際どのくらい使えるのかを実験してみました。
プレフィニッシュボンドとは
ボンドメーカーのコニシから発売されている内装用・木工用のボンドです。普通の木工用ボンドでは接着が難しいとされる、塗装された材料や塩化ビニルフィルム化粧材などと木材との接着に使用します。
塗装などで仕上がっている壁面に後から面材を取り付けるようなシチュエーションで活躍してくれるボンドです。
見た目や使い方は普通の木工用ボンドと変わりません。
木工用ボンドと比較してみました
コニシの普通の木工用ボンド「CH-18」を使って比較してみました。
見た目
まずは見た目です。色や粘度など、ほぼ同じと言って良いでしょう。
左:プレフィニッシュボンド 右:木工用ボンド
気温25℃~32℃で48時間放置。木工用ボンドの方が早く透明になりました。
テスト方法
テストする素材と木材とを2種類のボンドで接着してみて強度を比較してみました。
実際に使用するシチュエーションに近づくように、ボンドを塗ったタモの面材をピンネイルで固定する方法で実験しました。
ボンドを塗って・・・
ピンネイルで2か所固定しました。はがすときに力を入れやすいように素材から面材をずらして固定しています。
実験素材と結果
木工用ボンドでは接着が難しそうな8種類の素材を試してみました。素材はすべて9mmベニヤに貼り付けて反りが影響しないようにしました。
24時間以上放置してから面材を剥がしてみて結果を比較しました。
画像内ではプレフィニッシュボンド=PF、木工用ボンド=白と表記してあります。
塩化ビニルフィルム化粧材
木目などの模様がプリントされた塩化ビニルフィルムを合板やMDFに貼り付けた化粧材です。実験では市販の塩化ビニル製の木目シートを使用しました。表面に凹凸はありません。
木工用ボンドは手の力であっさりと剥がれました。シートがボンドを弾いてしまっています。
プレフィニッシュボンドは手の力では剥がれず、玄能で強く叩くとシートごと剥がれてしまいました。かなりしっかりと塩化ビニルシートと接着されています。
ビニールクロス
一般的な住宅に使用される壁紙です。市販の塩化ビニル製の補修用壁紙を使用しました。表面はかなり凹凸があります。
木工用ボンドは多少クロスの凹凸に食いついているようでしたが、手の力で剥がせました。
プレフィニッシュボンドは玄能で強く叩くとクロスごと剥がれてしまいました。塩化ビニルフィルムと同じようにしっかりと接着されています。
塗装面
ラッカー塗装されたシナ合板を使用しました。
どちらのボンドもかなりしっかりと接着していました。玄能で力いっぱい叩いてようやく剥がれました。
意外だったのが、相性が悪いと思っていた木工用ボンドでもラッカー面にしっかりくっついていた事です。
アイカ マーレスボード
アイカの品番「BB」から始まるシート化粧合板です。合板にプリントされた化粧コート紙が貼ってあります。表面に凹凸はありません。
中央にマジックで書いた文字を弾いてしまうようなつるつるした素材です。
どちらのボンドも手で力を加えたらパコっと外れてしまいました。完全にボンドを弾いているようです。
見た目は塩化ビニルフィルムと似ていますが全く接着しません。現場で何かを接着する場合にはよく確認した方が良いでしょう。
アイカ ラビアンポリ
品番「LP」から始まるポリエステル化粧板です。木目の表面はエンボス仕上げ(木目調の細かな凹凸)です。
プレフィニッシュボンドは結構しっかりと接着されていました。玄能で強く叩いてようやく剥がれました。面材の1部は化粧板側に残っています。
木工用ボンドも思ったよりしっかりと接着されていました。手の力では剥がれずに、玄能で弱めに叩いて剥がれました。
ポリエステルには相性が悪いと思っていましたが表面に凹凸があるので意外と食いつきが良いようです。
アイカ カラーフィットポリ
品番「RK」から始まるポリエステル化粧板です。単色で表面はデリカ仕上げ(細かな凹凸)です。
プレフィニッシュボンドは玄能で強く叩いて剥がれました。
木工用ボンドは手の力では剥がれずに、玄能で弱めに叩いて剥がれました。
白ポリ
一般的な白色ポリエステル化粧板です。表面は凹凸のないフラットな仕上げです。アイカの「GPF-5414」を使用しました。
表面がフラットな分だけ接着が弱いと思っていましたが、「RK」と同じくらいの強度でした。
プレフィニッシュボンドは玄能で強く叩いて剥がれました。
木工用ボンドは手の力では剥がれずに、玄能で弱めに叩いて剥がれました。
アイカ セルサスメラミン
品番「TJ、TJY」から始まるメラミン化粧板です。エンボス仕上げ(木目調の細かな凹凸)に指紋が付きにくいさらさらとした手触りの加工が施されています。
プレフィニッシュボンドは玄能で叩いて剥がれました。「RK」や「GPF」に比べたら弱い力で接着されていました。
木工用ボンドは手の力で簡単に外れました。
まとめ
今回はプレフィニッシュボンドと木工用ボンドの比較実験をしてみました。
プレフィニッシュボンドはメーカーが謳っているように、塩化ビニル素材に対してよく接着できることが分かりました。
相性が悪そうなポリエステル化粧板でもプレフィニッシュボンドの方は玄能で強く衝撃を与えなければ剥がれないことが分かりました。
壁面に面材を貼り付ける程度の作業なら、ポリエステル化粧板にも十分使えそうな接着力です。ただし、ミラー枠や家具など重量物を壁に接着する場合には使えないと思ってよいでしょう。
今回の検証から、木工用ボンドでは十分な接着力が得られない素材でもプレフィニッシュボンドならかなり使えるということが分かりました。
おわり。